不思議な体験

『歴史の謎解き』

「ある歴史書から自分たちの未来が見えてきた」そういう言葉はよく聞かれる。
屋根裏部屋で題名が見えないほど分厚い埃がかかった古めかしい本の中にそれは書かれていた。しかし、それを見ていた少年はそっと本を閉じ屋根裏部屋を後にした。彼はまだ恋をしたことがなかった。  時が経ち、様々な経験を重ね少年は立派な青年へと成長していた。そして1人の女性と出逢った。2人は自分たちが驚くほどに波長が合った。自分が伝えたい事を誰よりも理解してくれて、相手が伝えたい事を誰よりも理解してあげられた。そして2人には大きく悲しい共通点があった。20年前に起きた戦争が原因で共に早くに両親を亡くしていた。しかし、その悲しみは2人から笑顔を奪うことはなかった。
青年の父は優秀な兵士であった。戦火の中、襲われていた女性を助けようとして死んでしまった。そんな父が彼にとって何よりの誇りであった。
彼女の母は大きな優しさに溢れた人だった。医師として人々を巣食う病気を治すことに一生を費やした。そんな母が彼女にとって何よりの誇りであった。
2人は深い愛に落ちていった。青年は幼い頃屋根裏部屋で見たあの古い本の事を思い出した。
「その実を食べると2人は永遠に一緒にいることができる」
青年は再びその本を手に取った。その言葉の先に『永遠の実』のありかを示す地図が描かれていた。戦争によって周辺の雰囲気も大分変わってしまっていたが、その実が生る木があるという丘は町の外れに今も変わらず残っていた。

一筋の光



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